生き物の不思議な行動
こんにちは。
静岡で活動しています
Aqua design Blue’Sの佐久間です。
前回、GWのお話しをさせて頂いたのですが、
一時期の私はGWが終わると
世界自然遺産「知床」に
野生動物の観察に
毎年出かけていました。
今でこそ、知床は色々な番組に取り上げられ、
特集をした雑誌や旅行誌を多数見かけますが
当時は情報があまり出回っていませんでしたので
世界遺産と言っても知る人のみ知る穴場的なスポットでした。
なぜGW後に出掛けるのかというと、GW中が仕事だったので
変わりにまとまった休みが取りやすかったのと、
この季節になると流氷で閉ざされていた沖合に船が出られるようになり
野生のシャチが観察出来るようになるからです。
(元々、シャチのトレーナー志望でしたので)
知床半島の細かい紹介などはまた別の機会にしようと思いますが、
今回はとても貴重な体験をした時のお話しをします。
(マニアックなお話しです)
世界自然遺産というだけあって多種多様な生き物が観察できるのが
知床なのですが、私の場合は滞在中の昼間はほとんど時間は海に出ています。
一日中船に乗っていても残念ながらお目当てのシャチに出会えない事も
あるのですが、それでも必ず他の野生動物に会えるのが知床です。
ある日の朝、漁船より沖合にシャチがいる事と、さし網漁の網にシャチが2頭かかっていたとの
情報が入りました。
スケトウダラやホッケの漁でさし網という漁法が使われているのですが、
シャチがこのような網に入り込む事はまずない、非常に珍しい出来度です。
野生のシャチを探しながら船を走らせていると、
最大深度が約80mという比較的に浅い場所で
シャチの死骸が漂流しているのを発見します。
この水深にはシャチはあまり来ないので、
かなり流されてこの場所に来たようでした。
朝連絡のあった網にかかったシャチかは不明ですが、
巨大なシャチが運悪く網にかかったとしても
漁船で曳航する事は難しく、傷ついた個体を保護や治療する
施設もありませんので、網から出した後に万が一死亡して
しまっても残念ながらある程度仕方のない事なのかもしれません・・・。
このシャチですが、死亡してからの時間がまだほとんど
経っていないようで、これだけ完全な状態で見つかる事は
世界的に見ても非常に珍しい出来事です。
しかも子供のシャチのようで、子供の個体にいたっては
さらに珍しく、死亡した直後なのでおそらく胃の内容物なども
完全な状態。
知床を含め、日本近海に棲息するシャチというのは
研究があまり進んでおらず、データーは不足しています。
特に海域によって食べ物の違うシャチにおいては、
何を食べているのかという事は研究する上で非常に重要な事です。
という事で、船で港まで曳航する事となりました。
港に着くと、クレーンで持ち上げて大型ダンプに搭載し、
翌日に北海道大学、国立科学博物館、日本鯨類研究所などの
研究機関により各種の測定とサンプリング採取などが
行われました。
陸揚げ後に私が測定したデータでは、
体長約4メートルのメスで、年齢は恐らく1~2歳。
(超貴重な写真も色々と撮影していますが、
この場では控えます)
その日の午後、再び船で沖合に出た時に不思議な光景を目にしました。
3頭ぐらいのまだ若いメスのシャチが、船の周りを
グルグルと回ってその場を離れようとしないんです。
普段、水上の様子をのぞき込むような
行動を見せたり、船の横を一定の距離を保って泳いだり、
船の下を通過するような事はありますが、
このように船の回りをグルグルと泳ぐような行動は見せません。
初めて見せる行動です。
しかも、時々横になりながら様子を伺っているような仕草も見せます。
この様子を見た船長は、
「曳航した子シャチの匂いが船についているんじゃないか?」
と話をしていました。
実は死骸を見つけた時も船長は
「他のシャチが、はぐれた仲間を探しているはず」
という話をしていたんです。
シャチという生き物は血縁関係のある仲間で群れを
形成していて、動物の中でも群れの絆が非常に強い生き物と
言われています。
なので、この船から離れずに泳いでいた3頭のシャチは
もしかしたら死んでしまった子の
姉妹なのかもしれません。
ちなみに、鯨の仲間はエコロケーションという超音波で
物体を関知するので嗅覚はそれほど良くないと言われています。
なので、なぜこのような不思議な行動を見せていたのかは謎です。
(今までに聞いた事もない話なので論文に書けるレベルかも?)
生き物には、まだわかっていない不思議が一杯だな~と
感じた出来事でした。
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